二人の信頼を信じて

 ゲド戦記の「最果ての島」で、ゲドとレバンネンが二人きりで小船に乗って終わりの星のでている世界の果てまで行きます。
魔法が効かなくなったり、人々が争いを始めたり、秩序がみだれてきた原因を突き止めるための旅、
しかも成功するかもわからない命がけの、あてのないに旅に出かけます。
 ゲドは偉大な魔法使いで、ローク学院という魔法使いの学校の学長を勤めていました。
一方、レバンネンは王家の血筋をひき魔法使いではありませんが、魔法や魔法使いに強く惹かれてローク学院を訪れました。
魔法使いではないので、中にはいることはできないのですが、特別に通してもらったのでした。
 はじめてレバンネンがゲドに出会って、レバンネンはゲドを尊敬し、師匠のように思っていたのでした。
ゲドもレバンネンを見かけて、その魅力にひかれていたのです。
 しかし、世界の果ての旅に進むと恐ろしいことが増えていきます。
不信や欺瞞、争いやいさかいが絶えず、近くの島では戦争が始まったりしました。
水や食料をもらいに立ち寄った島では、近づくと矢が飛んできて、ゲドは傷を負ったのでした。
 旅に進むにつれて、レバンネンはゲドが信じられなくなってきてしまうのでした。空には不吉な星が輝き、海の水はよどみ、触れることすら危険なのでした。ゲドは魔法使いなのに魔法を使わず、舵も手で切っています。
かたくなに先方をみている老人が本当に偉大なのだろうか、自分をだましてどこかに連れて行ってしまうのではないかという不信の思いが募ってしまうのでした。
 二人だからできる旅でした。ゲドでさえも一人ではできなかったことなのです。
お互いが信頼しあう気持ちが、世界の果てでも二人が正気でいられる頼みの絆だったのです。お
互いが信じあうことで、二人は世界の果てまで行き、そこで何が起こっているか見に行きました。
そしてさらに冒険を続け、世界の均衡、秩序を取り戻すために、戦うのでした。


 今は世界の終わりなのではないか、どこかにひずみがあって秩序や均衡が乱れているのではないかと思うときがあります。
将来のことを考えると不安なことばかりです。いろいろなことに怒ったり疑ったりしたくなります。
でもこんなときにお互い信頼する気持ちをもっと強く持てたら、少しは嫌なことを忘れることができそうです。
二人がお互いを信じる気持ち、この気持ちは夫婦がお互いを信じる気持ちと似ているように思います。
レバンネンとゲドがお互いを信頼して乗り切った旅のように、人生の過酷な旅を乗り越えられるような信頼という絆になるかもしれません。
 

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

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